7/13/2005

八兵衛

五代将軍綱吉の頃。甲斐の国、中山道沿いのとある丘の上に、ちょっと知られた団子屋があった。
そこに黄門一行が通りかかると、当然八兵衛が団子を食おうというのだ。
天気は晴朗、丘から見晴らす山景に、ご老公もまんざらではない。
「いい景色ですなあ」
「まったくでございます」
「絶景ですなあ」
「うーんうまい! この団子は絶品だ!」
八兵衛はさっそく床机に腰掛け、両手の団子を交互にほおばっていた。
「おい八! この景色を前にして、その態度はどうよ!? お前もたまには旅情とかだな、もっとこう普段思わない‥‥」
「やだなあ助さん、オイラだってちゃんと哲学してますよ」
「ホントか!? 何を考えてるんだ」
「この国の未来のことです。神君(徳川家康)様が天下を治められて以来、世の中は平和が続き、繁盛しています。人の往来もますます盛んになるでしょう」
「その通りだな」
「そうなると大切なのは街道です。人通りが多くなるにつれ、今の細い道では、いずれ交通量をさばけなくなるでしょう。道を広げ、雨が降ってもぬかるまない よう工夫しなければなりません。荷車や早馬で事故がおきないように、専用の道を作ったり、上り下りを分けるのもいいかもしれませんね」
「なるほどなあ」
「しかし街道ぞいに休息の場も必要になります。例えばこの団子屋ですけど、周囲は比較的平らですね。あのへんに馬つなぎ場を作って‥‥隣に駕籠置き場を‥‥井戸を‥‥団子屋も広げなくっちゃ‥‥おみやげを‥‥」
のちにこの丘は、中央自動車道談合坂サービスエリアと呼ばれることになる。

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